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水族館の正体 vol1 |
水族館は日本のサブカルチャー


水族館のサブカルチャーを象徴するペンギンの個体識別マフラーのぬいぐるみ
個体識別の色のマフラーを巻いているペンギンぬいぐるみ

水族館のガラパゴス化がおきている!?

全国に水族館が130館以上ある日本は水族館大国といわれています。 いまや日本の水族館は魚をみるだけの場所ではありません。マニアックな体験型プログラム、生物モチーフの「ぎょっとする」メニュー、アニメとのコラボイベントなど、それぞれの施設がお客さんのニーズや時代に合わせた工夫によって、独自の進化をとげてきました。
こうした動きの中で、水族館ならではのコンテンツやコミュニティが確かに存在しているのをみると、水族館は日本独自のサブカルチャーのひとつといえるのではないでしょうか。
(*ちなみにガラバゴス化は良い意味で使っています)



2つの事例からみるコンテンツの広がり

たとえば、すみだ水族館の「ペンギン相関図」は飼育スタッフしか知らなかったペンギン同士の関係性を図解によって伝えることに成功。まるで昼ドラのような恋愛模様を連想させる、複雑すぎる内容でSNSを通じて話題になりました。(「ペンギン相関図」は2020年にオリックス不動産株式会社によって商標登録されています)

すみだ水族館のペンギン相関図には情報がぎっしり


また、átoaや四国水族館などから広まったとみられる「魚朱印(ぎょしゅいん)」は特に西日本の水族館で多くみられ、魚朱印帳をもって水族館をまわり、それぞれ絵柄が違う魚朱印を集めるムーブメントも生まれました。神社の御朱印集めの文化をとりいれて地域の特色をだすことにも成功しています。

atoaの魚朱印は生物紹介もついてくる


ここにあげた2つの事例は、生物に関する出来事を人の目線にあわせて共感しやすく伝えたり、他のカルチャーがもっている参加型の仕組みをかりることで、水族館ファンだけでなく、それ以外の人からの注目も集めることに成功しています。


サブカルチャーとはなにか

サブカルチャーという言葉から、多くの人はアニメやオタクやアイドル文化などを連想するかもしれません。しかし、本来の定義としてはハイカルチャーからは外れた、マイノリティーな特定の集団が支持する文化のことを指します。(定義や由来は諸説あり)
ハイカルチャーとは、クラシック音楽や伝統的美術、学問のように「ある程度の教養や訓練を前提とする文化」のことです。かつては貴族や知識人階級が中心となり、制度や権威によって支えられてきました。だからこそ「高尚」ではある一方で、大衆にとっては敷居が高く、参加が制限されやすい文化でもありました。 1960年代のアメリカでは、ヒッピー運動など大きな力に抗う「カウンターカルチャー」が登場しましたが、その後衰退し、1970年代以降はより多様で日常的なサブカルチャーが台頭しました。 なので、サブカルチャーを単純にアニメ・漫画・アイドルなどのオタク的な文化でしょ、と捉えてしまうとちょっと狭い見方になってしまいます。

大学時代、先生が茶の湯を例にあげながら「文化をハイにしすぎるとマイナーなものになっていく」と語っていたことがあります。茶道は美しい文化である一方、参加するには礼儀作法や知識が必要です。「人とお茶を飲む」という行為を極限まで崇高な儀式にした結果(時代劇では政治的な交渉の場などで茶の湯のシーンが登場しますね)、ハイカルチャー的になり、大衆的な気軽さはなくなっていき、結果として参加人口は減っていく…そんな流れは茶の湯以外でもありそうです。





水族館と大衆性

私は日本の水族館の「大衆的である」という特徴がとても好きです。ほかのミュージアムに比べてもその要素が強いと思います。例えば、美術館は時代背景やアートの文脈などの知識がついてまわるし、博物館も専門的な解説が多くて知識がないとついていけないような雰囲気がありました(ここ最近は変わってきましたが) それに比べて水族館は言葉を介さずに生物の姿を楽しめ、子どもから高齢者、外国人までもが同じ感動を共有できます。そして、施設はさまざまな世間の流行も取り入れます。この「誰もが楽しめる」大衆性こそ、日本の水族館の魅力だと思います。

海外では「調査・研究・環境保護」などの要素が強いことに比べて、日本の水族館は「娯楽・体験・商業性」を強く求められた結果、調査研究などを起点とはしながらも「水族館でみんなで楽しむ」という周縁の文化がさまざまに広がっていることが特徴であると思います。


▼おわりに

・日本の水族館は「娯楽・体験・商業性」を強く求められた結果、差別化の中で独自の文化を生み出してきた
・大衆性を維持したことで、教育研究施設でありながらカルチャーの拠点になった

もし、水族館と好きなコンテンツのコラボイベントを見つけたら、ぜひ足を運んでみてください。きっと新しい視点から生物のことを楽しめるイベントになっているはずです。

2025/09/02